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SEJ 日本のエネルギーを考える会

84号 「福島の復興を早めるために」−海洋の汚染は大幅に減りつつある・福島の水産物を積極的に購入しよう−


カテゴリ:     2013-11-6 15:27   閲覧 (1878)
IOJだより 放射線関連 編集局


福島県の海洋汚染の実態は、マスコミ等の報道に反して確実に狭まりつつあります。また、福島県の海産物で市場に出回っているものは、まったく心配なく消費できるものです。
IOJだより pdf
1. 福島事故後の報道の実態
最近の朗報は、福島県、茨城県などの漁業関係者がようやく近海での漁を再開し始めたことであろう。とは言っても、まだ試験操業の段階であるし、漁獲対象外の魚も多く残っていることもあって、本格的な操業開始とは言えないのが実情である。マスコミのいつまで経っても反省のない東電いじめの連続の結果、極めて広範囲にわたる風評被害がまき散らされていることがその原因の一つ。
さらに、政策担当能力、問題解決能力のない民主党政権が決めた低すぎて意味のない食材の汚染限度がもう一つの原因。自民党政権は、民主党と比較するとはるかに当事者能力があるとは思えるが、マスコミが撒き散らした風評に今の時点で真っ向から立ち向かい、食材の許容汚染限度を引き上げることを実行するには一般人の抵抗も大きいかもしれないという懸念や、TPP問題や経済再生の方策など懸案が多すぎて、躊躇しているとみるのが妥当なのだろう。

このような状況下、おりしも、オリンピック開催地の選定に当たって、海外の関係者からも福島ばかりでなく東京にまで汚染があるのではないかとの疑問が投げかけられたが、IOC総会の場で安倍総理が「汚染問題はコントロールされている」と明言したことから、東京が2020年のオリンピック、パラリンピックの開催地として決定された。東京がオリンピックの開催を否定されたら、だれが責任をとるのか?マスコミはその責任くらいは感じる程度の感性を持っているのであろうか?

それでもマスコミは今でも、汚染水貯蔵タンクからの僅かな漏えいを大げさに取り上げ、東電には当事者能力がないかのような報道を行い、あたかも大量の汚染水が海に放出されるような印象を視聴者や読者に与えている。この他、(1)地下水の流入を食い止める対策に抜かりがあった、(2)国の予算で400億円あまりの地下水防止対策が必要である等々、環境の汚染に関して数多くの情報を、それ等の人体、海産物、農産物等への具体的な影響を報道することなく、「出た」、「出なかった」だけの単純な報道にすり替えて撒き散らし、一般人の判断を「触らぬ神にたたりなし」の方向に持って行ったのである。

実は、いくつかの政府関係各機関が汚染の実態を恒常的に観測しており、これらの報告を見ればマスコミの報道が極めて一面的であることが分かる。これらの報告に基づき客観的な情報をここで提供し、福島産の水産物を国民が安心して購入し消費するようになることで、少しでも福島の復興が早まることを期待したい。

2. 海洋への放射能の流出の原因と防止対策の目的
福島第一発電所では、2011年3月11日に津波・地震によって内外電源が全て破壊されたために緊急時に機能すべき冷却系統が動かないという事態が発生した。機能しなくなった冷却系統に代って原子炉を冷却するために、淡水や海水を注入した。このような対策にもかかわらず、結果的に炉心溶融が発生し、原子炉圧力容器から放射性物質が格納容器や原子炉建屋、そしてピットなどに漏洩して溜まっていったのである。その後、追い打ちをかけるように地下水が原子炉建屋に流入し続けていることが分かり、これら汚染水の処理が現場での大きな問題となっていることは多くの国民の良く知るところである。

現在に至るまで継続されている海水の淡水化、セシウムの除去やタンク水のALPSによる除染等の活動が効果を上げつつあることもここで指摘しておきたい。今後は、地下水の流入を止め、放射線レベルの下がった水は海に放出するなどして、タンクに貯蔵されている汚染水の削減を目指すことが望ましい。これによって、原子炉施設からの汚染水の漏えい源を特定し、汚染の拡大を大幅に抑制することが可能となるのである。

そもそも、汚染水対策は漏えいした放射能が水や食物を通して人体の中に入り健康に被害を与えることを防ぐのが目的である。また、地域の漁業者にとって、漁業制限区域を一日も早くなくして、平常通りの漁業活動ができるようにすることである。更に放射能が流出し続けているとの風評から受ける被害から漁業者を守ることも重要な目的である。

3. 放射能による海洋汚染の状況
日本近海のCs137の海水中のセシウムの濃度の推移(図1)を海上保安庁海洋情報部が公表している。1973年前後に中国が原爆実験を行ったことから数年間は約0.01Bq/Lが続き、1986年のチェルノブイリ事故によって一時0.007Bq/L上昇したが、その後徐々に下がり、事故前にはおよそ0.002Bq/Lというレベルが続いて来ていた。


福島事故の直後には福島第一の西方約15Kmの測定ポイントの外洋では100Bq/L前後(告示のCs-137の基準値は90Bq/L)に急激に上昇したが、1年後にはおよそ0.05Bq/Lに減少し、現在は数km以内は基準の1万分の1の0.01Bq/Lを下まわり更に減少しつつある(図2)。


水産庁の報告では海水中の未検出の範囲が30km以遠であったのが、平成23年末には20Km の半円内でも未検出区域は多数あり、また、海底の汚染汚染の範囲も確実に狭まりつつあるのである(図3)。



4. 魚の汚染は減ってきている 水産庁は水産物に含まれる放射性物質の調査(図4)を行っている。この調査では、福島県沖と福島県以外の水域について、魚の食性に応じて、表層、底層の重量当たりのセシウムの濃度を調査している。従来は判断基準が500Bq/Kgとされていたが、福島事故後に民主党が科学的知見に基づかない100Bq/Kgという意味の無い基準に変更したために、現在ではこれに基づき評価されている。表層の魚は当初は50%が基準値を上回ったが、平成25年7月には2.7%までに減少、底魚についても判断基準を上回る検体は急速に減少し、平成25年7月には2.5%までになっている。これらの調査結果を踏まえて、これまで出荷制限されていた品目のうち、24年6月のコウナゴに続き今年10月9日にアカガレイの出荷制限も解除されたのである。


底魚に関しては、現在相双地区沖合で底引き網、タコかご漁業、船引き網漁業により試験操業が行われており、こうして水揚げされた魚が福島、東京、名古屋等へ出荷され、完売されている。台風明けの10月17日には、福島県南部のいわき地区でも試験操業が開始されたとテレビで報道され、着々と福島沖の漁業が復活しつつあるのは、喜ばしい限りである。但し、底魚でも、魚の種類によっては基準値をいまだ下回らないものがあり、これらは試験操業の対象とならず引き続き監視されている。

5. 風評被害の撲滅
以上に述べて来たように、福島沖の海洋汚染の実態は、マスコミが印象付けようとしている状況とは大きく乖離してきており、福島産の海産物で市場に出回っているものは、全く心配なく消費できるものであることを強く訴えたい。漁業に従事している人たちへの最大の支援は、彼らが汗水たらして収穫した水産物を積極的に消費することにあるのは言うまでもない。風評を撒き散らして、消費者に間違った消費性向を植え付けている反原発を掲げるマスコミ報道に、大いなる怒りを感じる。我々は、読者、視聴者の感性に訴えようとして、科学的な調査報告をあえて無視した報道を続けるマスコミには、これからも積極的に正すべく主張を続けてゆく所存である。

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