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SEJ 日本のエネルギーを考える会

142号 2050年に向けての考慮すべき課題(1) −どうする地球温暖化−


カテゴリ:  エネルギー » 地球温暖化    2017-4-25 20:40   閲覧 (3215)


政府は温暖化対策として、2050年にはCO2排出量を80%減らすこととしていますが、ほとんど不可能です。はたして今からそこまでの取り組みが必要なのでしょうか?改めてIPCCの温暖化の科学的根拠とそれに対する疑念について検証してみました。

1.はじめに
IPCCは現状のままCO2を排出し続ければ地球が温暖化すると主張しており、日本政府はこれを受けて地球温暖化対策として、2050年にはCO2排出量を80%減らすこととしています。しかし、これを達成するためには「Wicked Problem」(解決策のない課題)と言われるほど大変な取り組みが必要とされます。改めてIPCC(気象変動に関する政府間パネル)報告に基づく温暖化の科学的根拠とそれに対する疑念について検証してみました。


2.温暖化も寒冷化もある
現在は主に地球温暖化が心配されていますが、100万年前以降「氷期-間氷期」サイクルが約4万~10万年の周期で繰り返されています。これまでの「氷期-間氷期」サイクルでは温度上昇すると遅れてCO2が増加していますが、今問題になっている温暖化はCO2の増加が先で逆です。
参考とした資料Skeptical Science ここをクリック
更に、今のCO2増加速度は過去100万年の歴史に比べると3ケタ程も大きく、濃度は類を見ないレベルです。現在は間氷期に入って1.8万年経過しており、これから氷河期に入るのは確実ですが、現在の気象学ではその時期すら推定できません。IPCCは温暖化のみを評価していますが、同時に「氷期―間氷期」サイクルの影響についても同時に評価すべきではないでしょうか。



3.温暖化によって何が起こり、どのような疑念があるのか
温暖化発生を支持している科学者は、何が起こると主張しているのでしょうか。
�将来の温度の上昇の予想
図に示すように、1986〜2005年平均に対して最大の温度上昇は2035年までで、0.7℃、2081〜2100年の間には低位シナリオ(十分な対策をとる)で1.7℃、高位シナリオ(十分対策を取らない)では4.8℃上昇します。その結果、気温上昇するにつれて極端な高温がより頻繁に起こり、極端な低温の発生が減少します。



CO2の影響で温度が上昇するのは確かなのか
地球外に自然に放出される熱量について、CO2やメタンなど温室効果ガスの存在を考慮する場合としない場合とで検討しその結果を比較してみると、温室効果ガスを考慮しないと観測に合わないことから、気温上昇のシミュレーション・モデルは妥当とされています。





温度停滞があり、将来温度が下がるのではないか
シミュレーションで将来を予測する以上、観測されている温度停滞も模擬することが望ましいが出来ていません。火山の影響やラニーニョなど太平洋などの影響が適切に考慮されていないことが原因であると考えられています。
しかし、最新の日本の研究ではこの現象を組み込んだシミュレーションに成功(図)したという報告があり、その結果から、将来は温度が上昇すると予想されます。参考とした資料:地球温暖化の停滞現象の要因究明(東大) ここをクリック


�将来の 海面水位の上昇
2081〜2100年平均の世界平均海面水位の上昇(最大)は低位シナリオで25~55cm、高位シナリオで52~82cmの範囲となる可能性が高いと言われています。水位の上昇は主として熱膨張が30~55%、氷河による上昇が15~35%寄与します。氷河の影響の内訳は氷床の表面の融解と降雪量の収支予想から、グリーンランドではプラスに南極はマイナスに作用し、氷河の流出は両極合計で3~20cmの範囲で海面上昇に寄与するとされます。


�気候変動の不可逆性
二酸化炭素の排出に起因する人為的な気候変動の大部分は、大気中から二酸化炭素を大規模に除去しない限り数百年から千年規模の時間スケールで不可逆です。その結果、二酸化炭素の排出を停止しても排出された二酸化炭素の約15〜40%は、1,000年以上大気中に残り、数世紀にもわたって地上気温や海洋の温暖化が続きます。
しかし、温暖化が1000年以上残るというが、この間に氷期が来るかも知れない。この判断は氷期の推定も含め総合的な研究を待ちたい。

3に関して参考とした資料 IPCC第一作業部会報告書(抜粋) ここをクリック
その他の主な懐疑論(Skeptical Science) ここをクリック

4.温暖化対策に躊躇するわけは・・
論争の背景にあるのは科学的根拠についての考え方の違いもさることながら、環境派の国やグループが必ずしも立証されてはいないIPCCの主張を根拠にCO2排出量の低減を強力に推進しようとしており、その対策には莫大な費用がかかるという問題が含まれているからです。また、産業構造、社会構造まで大きく改変しなくてはならない可能性もあります。
トランプ大統領の石炭政策や石油パイプライン敷設の復活という政策変更の提案があるのも地球温暖化対策への疑念の現れの一つです。

IOJだより135号で紹介したようにIEAが検討した世界全体の対策費用の見積額の累積は450シナリオ(温度上昇につきおよそ2℃以下を目指す)では2016年から2040年までに合計8,500兆円、年間340兆円という巨額な費用が必要です。日本の検討でも年間50〜70兆円の費用が必要となるようです。詳しい内容は次回以降に紹介します。

5.まずは必ずやってくる化石燃料資源の枯渇に備えるべき
以上説明をしてきましたように、温室効果ガスの排出と地球温暖化の因果関係や「氷期−間氷期」サイクルの影響等を見極めるにはまだまだ時間が必要です。そこで、今は地球温暖化防止が本当に必要かどうか判らない段階であることから、CO2排出削減を直接目的とした行動を採るのではなく、まずは必ずやってくる化石燃料資源の枯渇に備えて、この消費の節減をすべきであると考えます。




6.化石燃料枯渇対策と地球温暖化対策は何が違うか

化石燃料枯渇対策は温暖化の進み具合、エネルギー消費の動向を見ながら必要に応じて化石燃料消費を抑制するという方法でできますが、地球温暖化対策は2030年まで、及び2050年までの削減目標に沿って、Wicked Problem」(解決策のない課題)といわれているあらゆる犠牲を払った対策が必要になります。非化石エネルギーだけで需要を賄うことが不可能な場合には、この不足を補うために止むなく化石燃料を使用することで、火力発電所から出たCO2を地下に貯蔵する対策が必要になるなど、まだ技術開発が必要でかつ膨大な費用のかかる可能性が高い対策が必要になります。再生可能エネルギーの拡大などに要する対策費の試算がどうなっているかはIOJだより135号をご覧ください。




7.おわりに


日本が排出するCO2の量は現在の世界の排出量の1.7%程度であり、IPCCの主張が正しいとしても日本のCO2排出量の増減は世界全体に大きな影響を与えるものではありません。しかし、IOJだより141号に述べたように化石燃料資源小国の日本は化石燃料に頼らない自給率の向上を図らなければなりません。化石燃料枯渇対策としての非化石化のために、再生可能エネルギーや原子力の有効利用を積極的に推進し、その技術を世界に発信するのが日本の役割と言えるでしょう。
また、地球温暖化や「氷期−間氷期」サイクルの問題は人類にとって重要な課題であり、将来予測のためには、一方の主張ばかりを取り上げるのではなく、予見を持たないバランスのある研究開発が望まれます。


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