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IOJ NPO法人 日本の将来を考える会
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161号 資源はないが知恵があるフランス、資源はないが知恵もない日本? −解決策はある−


カテゴリ:  原子力政策    2018-9-12 0:00   閲覧 (1255)

日本は地球温暖化対策、エネルギーの自給を目指し2030年、2050年と段階的なエネルギー基本計画を立てているが、現状技術ではほとんど実現できる見通しが立っていない。しかし、日本と同じ資源のないフランスでは今でもかなりの見通しが立っている。

はじめに
IOJだより148号では、日本はドイツを参考にエネルギー供給の基本計画を立てるのではなく、フランスを参考にした方が日本の国情に合っていることを示し、フランスが採用している方針に倣った立法措置が必要であるとの意見を出した。この議論の根拠を今回はより詳細に説明する。
1.資源小国の日仏は共にオイルショックでエネルギー自給の重要さを認識した

1973年の第4次中東戦争を契機とする第一次オイルショックと、1970年代末から1980年代初頭にかけてのOPECによる石油価格の大幅値上げとイラン・イラク戦争の影響による第二次オイルショックで石油価格が高騰し、日本では電力の15%使用制限が実施された。その結果、化石燃料資源がない日本、フランスともに原子力発電の導入を加速していった。
フランスは、欧州で主導権を発揮するには確実なエネルギー源の確保が必須との方針を取り、資源を持つ英国やドイツに対して、フランスは国営電力会社EDFのもと、原子力の大規模開発によって、そのエネルギー源を確保する戦略に踏み切った。
一方、日本は原子力発電の開発を加速したのはフランスと同じであったが、国の方針が明確でなく、安定供給や安価な発電コストにも重点を置き、天然ガスや石炭火力も増やしてきたのが大きく異なる点である。

2.この違いがその後の変遷に大きな差をもたらした.
(1)電源構成の日仏比較
フランスはエネルギーの自給率の向上を目指し、国営の電力会社EDFは導入済みの水力発電に加え国産のPWRを導入し原子力と水力による非化石電力の割合は90%を実現しており、非化石燃料が一次エネルギーの約50%を賄っている。
一方、日本は福島事故前でも発電に占める原子力と水力による非化石電力の割合は約35%であり、非化石燃料は一次エネルギーの約20%を賄っているに過ぎず、フランスには大きく差をつけられている。

(2)炭酸ガスの排出の比較
福島原発事故前には、日本の炭酸ガスの排出量抑制はそれなりの成果がでていたと考えている人が多いかも知れない。しかし、GDPあたりで見てみると1990年代半ばから原発の推進は進まず、フランスには大幅に水をあけられてしまっている。またドイツでは原子力には消極的と日本では一般に思われているが、原子力の導入量は日本と同程度であるうえ、その後の原子力の削減は再エネで補っているおり、火力発電の比率が日本は増加しているのに対して、若干下がり気味の傾向が続いており、炭酸ガスの排出量は順調に下がってきた。その結果2000年には日本はドイツにも追い抜かれてしまっている。日本では原発の導入が1990年代に入ってから伸び悩んだことがドイツとの間で差の出た原因であろう。

3.なぜ、フランスは日本に比べて原子力を多く導入できたのか

(1)フランス人の国民性の違い


(‥膰業の事故に関連してNHKの「ワールドWaveモーニング」が紹介していた米ギャラップ社の世界47カ国の「原発賛成率」調査によれば、ドイツ、イタリアの原発賛成度は福島の事故前と事故後ではそれぞれ34%→26%、28%→24%に下がったのに対し、フランスは事故前が66%で今も58%だ。
▲侫薀鵐洪佑呂覆柴阿犬覆い里。国家安全保障のための核利用、という点では核保有と原発推進は共通した覚悟ということか。被爆国で核アレルギーのある日本とは土台が違う。
フランス人は独立精神が強い。エネルギーで外国に依存することには我慢がならない。(1973年の石油危機で中東産油国に4倍も高い原油価格を吹っかけられ、ロシアがウクライナ向けの天然ガス供給を停止した煽りを食うなど、痛い目に遭わされており)、石油も天然ガスもなく、石炭も枯渇した誇り高きフランスが独立を守るためには、原発しかないという判断だ。
い發舛蹐鵝▲侫薀鵐洪佑事故や放射能を恐れないわけではない。だが国全体に占める原子力産業のシェアが大きいので、それだけ原発や関連企業で働いている家族や友人も多い。原発立地の負担だけでなく雇用などのメリットも理解されており、フランスの原発は日本のように隅に追いやられるのでなく全国にまんべんなく散っている。



(2)EDFはどのような取り組みをしているのか

電気の需要は昼間にピークがあり、ベースロードの原子力だけで賄おうとすると、需要のピークに対応して出力を変動しなければならない。そのためには、昼間の需要のピークを下げるため、安い深夜料金を設定し、蓄熱温水器等の奨励や揚水発電によって需要の高い時間帯に発電する仕組みを行ってきた。このような取り組みは日仏同様であった。

しかし、フランスはここで終わらない
それでも需要のピークは火力発電で変動を吸収していたが、この役割を原子力発電にもたせるようにした。当初の軽水炉の設計では出力を急激に変動させると、燃料の被覆管に温度サイクルが加わるため被覆管が破損する恐れがあり、温度サイクルを与えないような運転が必要とされた。そのため、フランスは、温度サイクルに耐えられるような破損しにくい燃料や出力の変動を緩やかにする制御棒の設計改良を行ってきた。また、負荷変動に対応するため、ベースロード、周波数制御に対応できるモードや、一日の出力と変動速度をプログラムして負荷追従モードなどの開発をはじめ、中性子吸収の小さい制御棒や冷却材の温度変化で出力変動に対応するなどの工夫を継続して行ってきている。

⑶日本の取り組みは


電力会社は供給の不安定な石油火力は削減してきたが原子力の取り組みは異なる。
関電の例では原子力への依存を高め、高い水力の比率と相まって2000年前半では発電に占める非化石の割合は80%も占めるようになった。しかし、原子力の比率を上げると火力発電や揚水発電だけでは変動を吸収できないため、フランスと同様な取り組みを目指したが。地元自治体の反対などがあり許認可取得が難しく、週末の出力変動程度しか許容されていない。これでは、負荷変動に対応するためには火力発電をある程度高く保つ必要があり、原子力の比率を高めることはできない。
東電は原子力の導入と同時に安価で安定供給が可能なLNG火力の増強をしてきており、2000年前半には原子力とLNG火力はほぼ同じ割合になった。

結論 解決策はある

2018年7月にはエネルギー基本計画が改定され、2050年には全エネルギーから出るCO2を80%減らし、自給率の向上を目標に、再エネの主力電源化、原子力の依存を可能な限り低減する等に取り組もうとしている。この切り札になる再エネは変動電源であるため、系統への接続の難しさや変動を化石燃料などにより保障する仕組みがネックになっている。
その原因はエネルギー基本計画に原子力を可能な限り削減するという一文があり、前述した通りフランスのような原子力による需要変動対応の議論は禁じ手になっているのであろう。しかし、欧州原子力産業会議(FORATOM)は 2018 年 5 月 7 日に「原子力発電所 の柔軟性のある運転」を発表し、柔軟な運転が可能な原子力発電所は、出力が変動する再生可能エネルギーを補う最良のパートナーになり得るとの見解を示した。(後述)
フランスだけではない欧州のこのような仕組みを取り入れることを考えるべきであろう。
一部の原発反対派は、原子力を廃止するためには再エネを普及させればよいという考えから、このような見解には真っ先に反対するのであろう。しかし、このような仕組みが国民に理解されれば、原子力の安全性向上や負荷変動運転を可能にする燃料改善を行うことによって、大規模な送電網の補強をすることなく再エネの大々的な導入が可能になるであろう。偏った見解に固執せずに多くの選択肢を真剣に検討すべき時が来たように思われる

参考文献  原子力発電所の柔軟性のある運転 欧州原子力産業会議(FOATOM)発表 2018年5月7日    日本原子力産業会議から抜粋


エグゼクティブ・サマリー:
● 原子力発電は、欧州連合(EU)の発電システムの重要な要素であり、かつ欧州の発電システムの脱炭素化における再生可能エネルギーの主要パートナーである:原子力発電所は、EU域内で約27%の電力を供給し、低炭素電力の約50%を供給している。
● 欧州のエネルギーミックスにおいて出力が変動する再生可能エネルギーのシェアが増大するにつれ、CO2の排出を削減しながら、消費者にとって手頃な価格で手に入れることができる電力の供給確保が課題である。
● 原子力発電所は柔軟性の低いベースロード電源として広く認識されているにもかかわらず、いくつかのEU加盟国においては、原子力発電は柔軟性と送電網の安定性の要求に十分な解決策を提供できる大規模電源であるということである。技術的には、既存の原子力発電所や新しい原子炉設計では、周波数制御と負荷追従運転の両方をこなす性能があるものの、EU域内において実施状況は不均一である。いくつかの加盟国や地域では現在、原子力発電所の柔軟な運用の必要性やインセンティブがないが、他の加盟国では柔軟な運転が確立され、実績を積んでいる。
● 原子力発電所の柔軟な運転は、下記に依存する。
・適用可能な規制の枠組:系統運用者と原子力安全規制者によって設定される条件(設計・運転段階で)を含み、加盟国ごとに異なる可能性がある。
・市場環境を考慮した運転者の商業上の決定:原子力発電は、他の化石燃料による発電 と比べて、初期の資本コストが高く、燃料コストや運転コストは比較的低いので、全出力運転が一般的に最善の選択と考えられている。
● 原子力発電は、EUの電力システムを脱炭素化する重要電源として、長期的に見てEU域内で必要である。したがって、EUは、低炭素電源に対する長期的投資の特殊性を認識した電力市場や長期的かつ予測可能な炭素価格を可能とするCO2排出量取引制度(EU-ETS)を正しく機能させる必要がある。
● 原子力発電所の柔軟性のある運転に対する要請が高まるにつれ、間欠的な再生可能エネルギーの割合が拡大している電力システムのなかで、柔軟な運転が可能な電源に報酬を与えられるよ う、適切なメカニズムを電力市場の設計に盛り込むことが必要である。
詳しい原文はこちらから
https://www.jaif.or.jp/cms_admin/wp-content/uploads/2018/05/flexible_operation_of_nuclear_power_plants.pdf


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