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IOJ NPO法人 日本の将来を考える会

162号 太陽光発電 重視の国は極くわずか −導入には限界がある−


カテゴリ:  エネルギー » 再生可能エネルギー    2018-11-22 0:40   閲覧 (1395)

最近、九電では太陽光発電の増加に伴い需給のバランスが崩れ、接続の抑制が行われた。今後、変動電源に対して蓄電装置や送電網の拡充など大規模対策が必要とされ、また、狭い国土に太陽光発電が増加するにつれ地元のとのトラブルが問題になっている。太陽光発電の導入には限界があり、先行の欧州では今や頭打ちである。


1.エネルギー基本計画に基づく日本の立つ位置

経産省の有識者会合であるエネルギー情勢懇談会(注1)では、最近閣議決定された第5次エネルギー基本計画とその原案を検討して来たが、その主な論点は以下の通りである。
.┘優襯ーの安全保障
各国のエネルギー自給率を比較すると、米・中、英・独・仏は40%から90%であるが、日本は原発停止によって自給率はわずか7%であり、他国のように電力の国際連系線もなく、エネルギー安全保障が万全とはとても言えない状況にある。
∈謄┘容各の現状
● 国土面積あたりの再エネ発電量:



主要国の単位面積あたりの再エネ発電量を見ると、ドイツ40万kWh/㎢>デンマーク34万kWh/㎢>日本33万kWh/㎢>イタリア29万kWh/㎢>スペイン18万kWh/㎢>という序列にあるが、太陽光に着目するとドイツ11万kWh/㎢、日本9万kWh/㎢、イタリア8万kWh/㎢と続く。
日本は太陽光(政府がFITを導入して積極的に推進)と水力(山地が多く有利)の割合が特に高くなっている。


● 炭酸ガス排出量:
ゼロ・エミッションの安定電源の比率を見ると、スウェーデン88%、フランス88%、デンマーク15%、ドイツ25%、日本12%となっておりCO2排出係数は日本が最悪である。


● 日本は原子力低減の影響が大きい:


日本は2010年から再エネで500億kWh増加するも、原子力で賄っていた分が2800億kWh減少し、火力2000億kWh増加で、CO2排出量は4.3から5.0億トンへと増加してしまった。
2.世界のゼロ・エミッションの取り組み

2016年のゼロ・エミッション(非化石)の電源の内訳をIEAが発表している(注2)。最も発電量の多い中国では水力、風力、火力が世界でも最も供給量が多い。しかし、OECD諸国は原子力、水力、風力が中心であり、不安定電源である太陽光を中心に据えようとする国は見当たらない。



● 原子力と再エネの組合せ:
ゼロ・エミッションを安定電源に特化して実現している国々は、フランス(原子力72%、水力10%)、スウェーデン(原子力39%、水力40%)、カナダ(原子力15%、水力58%)、などであり、これらの国々ではCO2排出量が低下しているうえに電気代も安いという良い結果を得ている。


●太陽光発電先行国では:
ドイツ、イタリア、スペインでは太陽光発電の導入が先行していたが、日射量とともに変化する変動電源であるため、太陽光発電量が需要量を上回る場合には、火力発電の停止が必要となるばかりではなく、将来的には変動に対応するための揚水発電所の増設、大型で安価な蓄電装置の開発等が必要なことから、どの国も導入が頭うちになっている。(図)


3.太陽光発電設置の問題点


このように世界の非化石エネルギーの趨勢が決して太陽光ではない中、日本はFIT制度などの優遇制度の後押しと変動電源対応は将来の問題として棚上げした結果、例外的に太陽光の導入が進んでいる。(図)
● 変動する太陽光の系統への接続の問題
九州電力は太陽光発電の導入が進んでいる電力である。週末の2018年10月13日(土)に太陽光発電量が需要量を上回ると予想されたため、家庭用を除く約1万の発電事業者に発電停止を求め実施された。そのデータはまだ公開されていないので2018年の9月末の発電の内訳を示す。(注3)週末には需要が減り日射量が小さかったが、大きくなれば発電停止が必要なことが判る。
日本は2030年にかけては太陽光の発電量は5千万から1億KWまで増加すると予想され、このままでは全国の電力会社管内で太陽光発電の抑制が常態化する可能性がある。
● 無理な設置は環境の破壊を招く
日本では太陽光発電所がほぼ日本全土に展開しているが、太陽光発電所が設置される地域の人たちはその導入をどう考えているのであろうか。

用地を提供する人たちにとっては遊休地、耕作放棄地や未利用地であり、ありがたいと思っているかもしれぬが、土地の所有者以外は突然身の回りの広大な面積に太陽光パネルが設置されたわけであり、突然太陽パネルが設置され、静かな環境が脅かされ、反射光などの実害も報告されている。太陽光発電が更に拡大する場合、森林を伐採の上、山地の斜面に設置するようになるのであろう。山梨県北杜市の太陽光発電では、FIT(再エネの固定買取制度)の認定件数は2016年3月末で4792件、稼動件数は1241件と増加している。仮に、認定された太陽光発電設備全部が稼動すると、541ヘクタール、東京ドーム115個分、市の面積の1%程度になるという。(注4)(GEPR 太陽光発電による環境破壊、状況は悪化-山梨県北杜市  石井孝明氏より)


● 自然災害


日本は台風や土砂崩れなどの自然災害が多く、先の西日本豪雨や台風などで太陽光パネルの飛散や関連装置の故障が発生している。これらの被害は特定地域に同時発生する可能性が高く、電力供給に支障を及ぼすことになろう。また、山地の傾斜地に作られた太陽光発電設備では、山の崩落の原因になることも考慮しなければならない。
江戸時代に、人口の増加や収入の確保の点から森林の伐採が進みはげ山が多くなった経験があった。近年は、化石燃料の出現や食料の輸入が進み森林の伐採に歯止めがかかったが、今後、その教訓を忘れて太陽光パネルの大量設置をした結果、過去の二の舞となるような愚を犯してはならないであろう。



まとめ

再エネを主力電源とするうえでの注意点としては、再エネ単体の発電コストの低下だけではなく、他電源との調整力、ネットワーク内での安定など3つの課題がある。この度策定された日本のエネルギー基本計画は、太陽光発電を再エネの主力に置こうとするあまり、電力会社が構築してきた電力網を大々的に変更し、電力の貯蔵システムを構築し、グリッドのデジタル化などを実現しようとしている。日本の技術力をもってすればできないことではないのであろう。
しかし、2050年までに電力だけではなく他分野の化石燃料の使用をも削減しなくてはならず、水素利用や運輸の分野での非化石化が注目される時に、世界が注目していない太陽光発電の導入のために、そこまで手を広げる価値があるのかは吟味しなければならない。
日本はドイツの例を参考にしたがるが、ドイツの現状を教訓として日本の国情、地政学上の問題点に合ったエネルギー政策を構築すべき時が来たのではないか。安定電源である水力、原子力を中心に、洋上風力を含めた既存の電力系統に優しいエネルギーを利用すべきであろう。
太陽光発電がダメとは言うのではない。これまでの号でも繰り返し述べているが、再エネは魅力のある電源でありその普及を私たちは強く支持している。日本の風土、環境をつぶすことなく、既存の電力系統の負担にならないように切り離して、家庭や工場、病院、集合住宅などでの自家消費用として大いに進めたい。そのためには、昼間の太陽光が豊富な時間帯に蓄電するあるいは温水器、EV車への充電などハイテクを使わなくても利用できる手段はいくらでもあろう。日本の最新工業技術をそういうものに活用して欲しい。

注1 エネルギー情勢懇談会提言―エネルギー転換へのイニシャティブー関連資料 平成30年4月
  http://www.enecho.meti.go.jp/committee/studygroup/ene_situation/pdf/report_02.pdf
注2 World Energy Outlook2017,Electricity Information2018,IEA
注3 九州電力 エリア需給実績
 http://www.kyuden.co.jp/wheeling_disclosure.html
注4 太陽光発電による環境破壊、状況は悪化-山梨県北杜市
  http://www.gepr.org/ja/contents/20160927-01/



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