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165号 会員の声 中国に負けた日本の原発輸出  -この状況変えるには風を吹かせて桶屋に儲けさせる?-


カテゴリ:  会員の声    2019-4-1 12:30   閲覧 (474)


中国の原発の輸出攻勢は圧倒的なものであるのに、日本の輸出は全滅である。元商社マンは、これを解決するには「風が吹けば桶屋が儲かる」というようなひどく遠回りな対策ではあるが、まず原発事故による農水産物の風評被害をなくす必要があると言う。


1.はじめに


日経新聞が「消えた原発輸出」と題してシリーズを組んで報道をしている。日本の原子力技術を支えてきた3大メーカ(三菱、日立、東芝)が追いかけていた海外での原発プロジェクトは、全て中止に追い込まれてしまったという内容である。極めて当然の成り行きだと思われるが、この現状を打開しなくては日本の将来が立ち行かない。
一方、3月15日に講談社が発行している「現代ビジネス」が配信しているニュースによれば、福島産品は国内ばかりではなく海外でも抗議に遭い販売イベントを中止せざるを得なくなるなど、福島の水産物に対する「風評被害」はまだまだ収まっていないということである。NHKは、福島第一に溜まっている汚染水の海中放出が、やはり風評被害の影響から漁業関係者によって反対されるという現実を報道していた。
以上の現実を踏まえ、この状況を変えるためにはどうしたらよいか考えたい。


2.原発輸出の頓挫がなぜ当然の成り行きなのか


中国での建設が大々的に進んでおり、技術者は育ち、製造業は知見を蓄積し、機器・機材の単価は大きく下がっていく。経済原則を持ち出すまでもなく、中国の原子炉が自由諸国の原子炉よりも安く製造できるのは当たり前であると言えよう。一方日本の現状を見ると、新規建設は無く、存在はしているものの稼働すらしていない原発が31基も有り、学生の原子力離れが進んでいる。これでは技術者が育つわけがなく、製造業の知見は失われ、製造単価も下げようがなく、海外の商談で勝ち目があると考える方が無理である。

中国では2018年には6基の原子炉が運転を開始しており、建設中も14基と日本の1950年代から60年代にかけての原子力開発の勢いに迫る、あるいはそれを超える勢いで原子力発電所の建設が進んでいる。計画中も282基と想像を絶する基数が挙げられている。勿論、この計画が全て実現するのかどうかは今後の中国経済の成り行き次第ということになろうが、新増設を口にも出せない日本の状況と比較すれば、優位は一目瞭然であろう。更に2017年には高速実証炉CFR600「霞浦」を着工している。ここでも、既に多くの知見と多額の資金を投入して開発してきた「もんじゅ」をあたかも厄介払いのように廃炉にすることを決めた日本とは大きく異なっている。未来の原子炉として多くの技術者を育ててきた原型炉を強力且つ適切な反論をしないまま廃炉措置を許してしまう原子力関係者の無気力がこの上なく情けない。
原子炉メーカは自民党や経産省の後押しに期待を掛けているが、今の環境下でこの人達に後押しをして貰えると考える方が甘い。福島第一原発事故は自民党が野党時代に起こった。後に自民党は政権を復活させたが、事故当時の政権与党であった民主党のでたらめな事故の後処理を修正することなく放置して8年が経った。この間に、本当に日本の事を考えて与党が手を打っていれば、今の状況ではなかったはずである。



野党時代には、民主党の意図的な原子力規制委員会人事に安易に同意を与え、その後も積極的に規制委員会の体質改善のための手を打っていない。身内から事実無根の原発反対の意見を言い出す元首相が出ても、それを抑えることすらできない。経産省もエネルギー基本計画の策定にあたり、一応22%程度という原発比率を入れはしたものの新増設は文言に入れないという及び腰で、むしろ原発比率は将来的に可能な限り下げるとの文言を入れてしまった。22%の原発比率すらその実現のために必要な対策を施していない。再生可能エネルギーが主幹電源になりえないことは多くの知識人が指摘しているにも拘らず、過剰な太陽光発電設備を抑制しようともしない。これらは全て、今の環境下で与党議員の持つ「選挙の際に原発推進を口にすると議席を失う」との恐怖感からきているのであろう。官僚は決して責任を取らないで済むように立ち回るので、与党が動かない時に自分達がリスクを賭して原発推進を強力に推進するはずもない。
つまり、原発輸出商談に勝てないでいる原因の内、我々にできることの一つは日本の政治家、官僚の在り方を変えることということになる。





3, どのように変えれば良いのか
 政治家が恐れているのは、選挙で落選してしまうことである。日本に蔓延している原発嫌いの風潮を考えると、原発を積極的に進めるべしとの正論を吐くことは彼等にとってはこの上なく難しいことなのであろう。農民、漁民が被っている風評被害の現れの一つの形であると考えてもよい。前述1.では厳しいことを書いたが、このような環境であるので、政治家の消極的な態度を一概に責めることはできない。原子力で碌を食んでいる者達が、風評を消す努力をしなくてはならないのではないか。
 福島事故の直後に、福島県が東京駅八重洲口の近くで福島県産品の販売を行ったことがある。この時にマスコミも取材に来ていたのであるが、その中でテレビ朝日のカメラマンが近付いて来て「何をしに来たのか」と問われた。「福島の人たちが大きな被害を受けているので、少しでも助けになるならばと福島県産品を買いに来た。農業、漁業に携わっている人たちやモノ作りをしている人たちへ義捐金を送るのも一つの援助であるが、彼等の作ったものが売れることが何よりもうれしいはずと考えているからだ。」と回答した。するとこのカメラマンは「福島産品を食べて怖くないのか?」と聞いて来たので、激怒したことを思い出す。このような取材姿勢のマスコミが風評被害をもたらし、日本の状況を必要以上に悪くしているのは火を見るよりも明らかである。しかし、人の不幸を糧として風評被害をまき散らす人間のクズに何を言っても全く効果が無いことは、この8年間で身にしみて感じているので、マスコミを頼らずに風評を消す方策について提案をしたい。
 原発を推進したいならば、まず福島県民が風評被害から解放されなくてはならない。その意味からも、「福島県民を援助するならば福島県産品を買うべき」との考えはその後も全く変わっていない。すなわち、原発関係者が何とか福島の復興に寄与し、風評被害を撲滅しようとするならば、福島県産品を強力且積極的に購入する以外に方法はないのではとの考えに至った。
 福島県産の農産物も海産物も、放射能汚染に関して言えば既に規制基準を超える物は無いと言える状況になっている。それにも拘らず福島県産品は他の地方で生産されたものより安値で取引されてしまう。日本人が買わないのであるから、海外でまだ福島県産のものを輸入制限していても文句を言えるわけがない。これでは、日本から風評被害は無くならず、原発はいつまで経っても悪者ということになってしまうのである。このような状況をなくすためには、適切な価格で福島県産品が売れるという実績を作らなくてはならないのである。


4.終わりに
 福島第一に溜まっている汚染水を海洋放出しようとしても、地元の漁協はOKを出さない。自分達が捕って来た水産品が安値になる、あるいは買ってもらえなくなるのであるから当然であろう。ほんの少しでも原子力に携わった者達が必死になって福島産品を購入すれば、風評被害の撲滅に貢献できるのではないか。電力会社ばかりではないはずである。機器を納めた会社、燃料を納めた会社、保守補修あるいは除染作業に関係した会社、福島復興に携わった土木等に関係した会社、これらの会社に勤務した個人など、あらゆる関係者が自分のことと考え、自分一人ではなく、家族、友人までにも協力を依頼して福島県産品を購入し、早く、根本から福島事故後の風評被害撲滅に努めるべきなのではないか。
 福島県産の物が大量に販売できるようになればそれを生産する人が必要になる。人が集まるようになれば復興が加速する。復興が加速すれば風評被害は徐々に無くなっていく。風評被害がなくなれば、原発の運転に反対する勢力が減っていき、政治家も動き始めるであろう。政治家が動けば官僚も動き始める。このようにして、まず原発の再稼働、新設ができるような環境を整えなくてはなるまい。これが出来てから、原発を実際に動かし、建設をすることで、日本の原発メーカが再び原発市場で対等な戦いができるようになり、中国に大きく水をあけられてしまった原発輸出が初めて可能になるのである。「風が吹けば桶屋が儲かる」というようなひどく遠回りな対策ではあるが、中国だけの一人勝ちの世界を作らせないためにも必要なことの一つになるのではないだろうか。


参考
風が吹けば桶屋が儲かるのシナリオ
“風が吹くと土ぼこりがたって目に入り、目が炎症を起こし目の不自由な人が増える。目の不自由な人は三味線で生計を立てようとするから、三味線の胴に使う猫の皮を取るために猫が減る。そうすると、猫という天敵がいなくなるのでネズミが増え、ネズミはあちこちで桶をかじって桶を傷めるので桶屋が儲かるという話。



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