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SEJ 日本のエネルギーを考える会

168号 多様な再エネと国際連系線を持つ欧州 ーどちらもない日本! 再エネの主力電源化ができるのか?ー


カテゴリ:  エネルギー    2019-7-11 8:40   閲覧 (1405)


欧州でここまで再エネ拡大が進んだのは、多様な再エネと国際連系線の活用により風力や太陽光の変動性の影響を緩和できたことが大きい。一方日本では、太陽光に著しく偏重しており地域間連系線による需給調整は限定的である。

昨年10月から実施された九州電力の「太陽光発電の出力制御(抑制)」がこの問題を顕在化させた。FIT制度による国民の経済的負担の増大もあり、国としてもFIT制度の見直しに着手している。では「再エネの主力電源化」はどのように進めるのであろうか?


1.欧州と日本の電源構成はどうなっているか?
1)欧州の発電量の電源構成と特徴は?
EUの2017年における電源構成は再エネ30%、原子力26%、化石燃料44%である。EU各国の2016年の電源構成は図のとおりである。国により電源構成は大きく異なること、再エネの種類も多彩であることがわかる。EU非加盟のノルウェーやスイスも含めて全発電量に対する電源種別ごとの比率が高い主な国を表に示す。
2)日本の発電量の電源構成は? 
表に2017年度の電源構成を示す。再エネは全電力量のうち16%を占め、水力を除く再エネの中で太陽光が圧倒的に高い(5.2%)ことが分かる。


2.電力系統はどうなっている?


1)欧州の電力系統の特徴は 



図に示すようなメッシュ型の送電網が形成され、国際連系線も整備され国をまたいだ電力需給の調整がしやすい状況が生まれており、さらに拡張する動きがある。
2)日本の電力系統の特徴は?
本土の基幹電力系統(図)は基本的には「くし型」構造をしており、地域間の電力融通はしにくい状況にある。地域間連系線の拡大には膨大な資金と期間を要する。その経費をどこが負担すべきか、送配電事業の分離と絡んで重要な課題となっている。


3.電力の需給調整はどのように行われているのか?
1)欧州では?

再エネの発電割合が2017年において30%を超えた。それを可能にした大きな要因の一つは、‘胆が異なる各種再エネの利用が可能あることである。特に変動性が著しい太陽光及び風力の変動性を調整するうえでノルウェー、オーストリア、スイス等の水力が巨大な蓄電池の役割を果たしている。
さらに安定型再エネの一つであるバイオマスがかなり多いことも見逃すことができない。各国で所有するエネルギー資源を考慮したエネルギー政策に基づいて、国内で化石燃料をベースロード電源あるいは調整用電源として利用している。ドイツでの石炭・褐炭の利用はこの例である。イギリスは依然として石炭および天然ガスの割合が高い。一方フランスは化石燃料をほとんど持たないので、国の政策として原子力を基幹電源としており、さらに需給に対応する負荷追従運転も行われている。
これらの多様な電力源に加えて国際連系線も含めメッシュ型送電網が張り巡らされていることにより、国、地域を跨いで需給調整ができることは再エネ電源の大量導入に極めて有効であると考えられる。



それでも需給の調整が難しい場合には、C濺澱咾陵用が考えられるが欧州の現状ではさほど一般的ではない。それでも調整が困難な場合にはず謄┘佑僚侘詫淦を実施している。ドイツでは風力発電の急速な増大に対応する送電設備の増強が追いつかないことから再エネ出力の抑制率が3%に達している。
上図でドイツでは風力と太陽光の変動に対して基本的には石炭火力により調整を行っているが、不足時には電力の輸入により、また風力と太陽光の好条件が重なり、余剰電力が生じた場合は電力輸出を行っている。他方デンマークでは風力が主力電源であるが、需給調整はやはり石炭火力により行い、足りない時間帯においては電力輸入を、過剰の場合には電力輸出を行っている。
図は原子力を主力電源とするフランスに着目した場合の周辺各国への電力の流出入を示す。


2)日本では?
電力の需給状況は各電力会社管内によって異なる。九州電力は2018年10月から2019年5月12日までに合計57回太陽光の「出力制御」(出力抑制)を実施している。今後他の電力会社でも同様のことが起こり得る。変動型再エネの出力変動を主な対象にした電力需給調整に関して現状では火力発電の出力調整運転は最も大きな貢献をしているが、CO2の抜本的な削減の要求から今後これに頼れない。揚水発電は最大限利用しているが現状以上の拡大は困難である。
地域間連系線の活用については、電力需要が多い首都圏及び関西圏で変動再エネ電力を現状では受け入れる余地がある。しかし連系線の容量増強には膨大な費用と期間を要する。大容量蓄電池は以前から開発と実証事業が実施されており、一部活用されているが経済性の壁を越えるのは容易ではない。
4.日本ではこれからどうしたら良いか?
これらの取り組みだけでは「再エネの主力電源化」の実現は「かけ声」に留まる。そのため近い将来に向けては以下に取り組む必要がある。
(1) 太陽光以外の再エネの利用拡大:容量的には洋上も含めた風力が期待できるが、導入量の拡大と経済性の向上が大きな課題である。
(2) CC(U)S利用を前提とした火力の拡大 :日本の地質環境でどこまで導入できるか、付加的コストがどの程度になるか不明である。
(3)原子力発電の負荷追従運転:CO2削減のため火力発電の縮小を行ったうえでの調整運転には限界がある。原子力発電の拡大と比較的ゆるやかな負荷追従運転が現実的な解決策となる。独、仏等では長い運用実績があり、日本でも以前に負荷追従実証試験をおこなった実績がある。
(4) 水素 :発電/熱/輸送用に期待されているが、余剰電力からの製造・貯蔵・輸送・利用にわたるエネルギーロスが多く、経済性がどこまで高められるか?
(5) EVの蓄電池:今後EVは大幅に普及し、使用する蓄電池も革新的進化を遂げるものと予想される。家庭や商業施設も含む充電装置をシステムとして結合し需給調整に利用する可能性はあると思われる。そのためには通信・制御システムも含めた総合的なシステム構築(スマートグリッド)が必要となる。
(6) 需要側での調整:より高度で大規模な対応が望まれる。
以上述べた方策は技術的、経済的、時間的壁が高く、近未来に実用化が見込まれるものではない。(ただし(3)は海外実績と国内での成果もあり技術的には対応可能)しかし太陽光偏重で欧州のような国際連系線を持たないという弱点を持つ日本においては、上記(1)〜(6)の分野を世界に率先して開発しなければ日本は立ち行かなくなる。以上は発電分野の議論であるが、輸送分野においてはEVが大型車まで対応できるようになると思われる。最大のエネルギー需要分野である熱利用のうち、中低温域ではエネルギー効率の良いヒートポンプ方式でカバーできるが、高温や製鉄等の分野で水素等がどこまで何時頃までに実用化できるか見通せないが画期的な新技術が期待される。
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