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SEJ 日本のエネルギーを考える会

169 号 どう取り組むべきか日本のエネルギー政策 −まずエネルギーの自立を考えよう−


カテゴリ:  エネルギー    2019-7-25 11:30   閲覧 (2589)

1973年、1978年のオイルショックを経て、資源のない日仏は準国産エネルギの原子力にかじ切ってきた。しかし福島原発事故の影響で多くの原発は廃止に追い込まれ、主要国で最低の8%という自給率となった。中国、インドの爆発的なエネルギー需要の増加に加え、ホルムズ海峡危機に代表される国際紛争が頻発しており、今後10年、20年後にオイルショックを超える紛争が再発しないとは言えない。その前にせめて日本経済の基幹となる電力の自立を図らなければならない。



考慮すべき事項 第5次エネルギー基本計画、エネルギー自立路線、脱炭素、原子力、再生可能エネルギーへの過度な依存悲観的
はじめに

日本は主要国の中でとりわけ資源に乏しくエネルギー自給率の低い国であるが、国民の間ではこの現実が十分に認識されていないように思われる。経産省のエネルギー情勢懇談会は「エネルギーの海外依存構造を変えるというエネルギー自立路線は不変の要請である。エネルギー技術先進国である我が国は、脱炭素化エネルギーの開発に主導的な役割を果たしていかなければならない。」と述べている。一方、経団連は「原子力を巡っては、好き・嫌いの感情的な議論ではなく、国や地球、人類の将来を含めもっと大きな捉え方をする必要がある。100年先、200年先を見据えれば、原子力は必要である。すべてのエネルギーを再生可能エネルギーで賄えて、国際競争力も維持できれば良いが、ハードルはかなり高い。」と再生可能エネルギーへの過度の依存には悲観的である。



1.世界の状況

世界のエネルギー資源需要を見てみよう。2040年には、中国、インド、東南アジア等のエネルギー需要は爆発的に増加しOECD諸国を上回り、世界の需要は1.5倍になる(BP Energy outlook2019)。化石燃料の獲得にかかる国際競争は今後ますます厳しくなり、エネルギーの自立が何よりも重要になってくる。
現在パリ協定に基づくCO2排出量削減が大きく取り上げられているが、世界ではアメリカをはじめEU内でもパリ協定の実効性に疑問を持つ国があり、G20軽井沢での閣僚会議では、今後の向かうべき方向が検討された。その結果、エネルギーの安全保障、省エネ、再エネ、原子力の重要性、化石燃料の供給の確保の重要性などが参加各国による自発的アクションとして確認された。日本の取り組みも同様であることは言うまでもない。
このような状況下、日本にとっては地球温暖化対策であれ、エネルギー自給率向上の方策であれ、具体的なエネルギー政策の確立が必要であり、どのように取り組むべきか考えてみよう。



2.エネルギー基本計画

震災前、民主党政権下の2010年の第二次エネルギー基本計画では、.┘優襯ー自給率 18%を倍増させる。電源構成に占めるゼロ・エミッション電源比率(原子力、再エネ由来)を現状の34%から約70%(2020 年には約 50%以上)に引き上げる、と野心的なものであった。しかし、翌年の大震災後の第5次エネルギー基本計画では2030年にはエネルギーの自給率を24%、▲璽蹇Ε┘潺奪轡腑麋耄┐鮑謄┘諭原子力とも22〜24%とし、8胸厠呂魏椎修文造蠶禪困垢襦△箸いκ針となった。そこでは、エネルギーの自立を達成するという目標が抜け落ちており、原子力への依存を如何に小さく国民に見せるかに配慮したもので、再エネへの取り組みをアピールするだけの計画となってしまっていた。
日本は、エネルギーの自立をできるだけ早期に実現する必要があり、その為に今後のエネルギー基本計画はエネルギー資源のないフランスを目標にするか、せめて第二次エネルギー基本計画並みにすべきであろう。
これからますます原子力の活用が重要になるし、資源に余裕のある石炭の活用を考えることも重要になるであろう。以下にこれら課題を紹介する。



3.各国は国土の事情、技術の事情を考慮して方向付けをしている
化石燃料と一次エネルギーの自給率(上図・折線グラフ)と電源構成(下図・面積グラフ)の国別特徴を図示する。フランスは1973年のオイルショックを契機にエネルギーの自立を目指し、原子力の開発を進めた結果原子力と水力と合わせて90%以上の非化石発電をし、発電分野では化石燃料への依存を極めて少なくしている。
スウェーデン、スイスは山地が多く大量の水力発電と原子力との組み合わせで電力自給率は90%前後となっている。

日本もオイルショック以降、石油を減らし石炭とガス火力に切り替え、原子力の導入に踏み切ったがフランスのように徹底しなかった。福島原発事故後の原子力の停止により一次エネルギー自給率は20%から10%以下に大幅に低下した。代わりに導入を進める太陽光中心の再エネはコストアップに加え需給バランスの調整や、送電網、蓄電などのインフラ対策が必要になってくることから見通しが暗い。原子力を可能な限り低減し再エネで自給率を確保するのは非現実的なことが明らかになってきた。
ドイツは自国の石炭、パイプラインで供給される天然ガス、原子力が中心であったが、20年前ころから再エネの導入を始め、これに合わせて原子力を削減してきた。自給率は一次エネルギー38%、石炭68%である。
英国は世界で原子力発電を先駆けて導入した国であり、石炭から天然ガスに切り替えつつある。自給率は一次エネルギー68%、石油80%、ガス50%である。ここにあげた日本以外の国々は化石燃料を含めそれなりの自給率を有し、エネルギーの自立を図っている。



4.具体的に日本の自給率を上げるためには
フランスとの比較 
エネルギー基本計画では2030年での再エネ、原子力などの導入の例示をしており、フランスと比較することができる。2030年での電源の非化石比率は日本の40%に対してフランスは現状で90%である。民主党政権時の第二次エネルギー基本計画の70%に近づけるには原子力を2倍にしなければならない(図参照)。
福島事故後、福島第一をはじめ多くの原発が廃炉を余儀なくされているので2倍にするのは非現実的であろう。今日、石油、天然ガスなどをめぐり中東、東欧、南アメリカなど国際紛争が頻発しており、新たなオイルショックが起きてもおかしくない。エネルギーの自立が極端に遅れている日本は何とかしなければならない。
原子力や太陽光以外の再エネの導入の見通しが不確実であり、エネルギー自立の目標達成が困難であるのなら、世界的に資源に余裕があり、中東からの輸入がゼロで大半を紛争リスクや輸送リスクの小さいオーストラリアやインドネシアから輸入している石炭を火力発電の基幹燃料に切り替えエネルギーの自立に役立てたらどうか。


見違える石炭火力 
石炭火力は発電コストが安いが、CO2 を多く排出すること、変動する再エネの電力の調整には石炭は向いていないなどの欠点があった。しかし、日、米、独などが進めている新鋭の石炭火力は、石炭をガス化しガスタービンで発電し、さらに高温の排気により蒸気を発生させて蒸気タービンで発電する仕組み(石炭ガス化複合発電:IGCC,IGFC)であるため、出力調整が容易であり、また発電効率も良い。効率が1%上がると660万トンのCO2が削減できるという試算もある。
日本では、火力発電に占める石炭火力のCO2の排出量は23%を占めているが、新鋭石炭火力ならこれを30%削減し、16%強にまで下げることが期待できる(図参照)。また、将来はCO2の貯留システム(CCS、CCUS等)を活用すれば、さらなる削減も期待できる。
今後、需要が拡大する発展途上国ではコストの安い石炭火力を採用するのは必然であり、日本の最新技術が利用できればCO2 排出量の削減に大きく貢献するであろう。


まとめ
日本政府は、あまり期待できない太陽光にこだわっていると同時に「原発比率を可能な限り下げる」との大衆迎合の方針を打ち出している。国家にとって極めて重要なエネルギーの自立を本当に考えているのか疑問を待たざるを得ない。これでは、次の時代を生きる若者たちは心配になるであろう。年金問題等ばかりが大きく取り上げられているが、エネルギーあっての日本、産業があっての日本であることを忘れてはならない。
日本では再エネを主力電源としエネルギーの自立を図るためにはさらなる技術開発が必要であるし、その実現に時間が掛かることが分かっている以上、現実を直視し、原子力発電所の再稼働の早期実現、増設、建て替えなどを真剣に考えるべき時が来ている。また再エネや原子力の導入が遅れるのなら、エネルギーの自立のためにはいわば輸入リスクの少ない海外資源ともいえる石炭を利用することを考えたらどうか。
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参考とした資料:詳し次世代石炭火力の取り組み(経産省)はこちらをクリック

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