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SEJ 日本のエネルギーを考える会

170号 使用済燃料最終処分場の受け入れの海外事例 スウェーデン、フィンランドはどうだったか


カテゴリ:  原子力政策    2019-11-26 20:40   閲覧 (5589)

日本では、高レベル廃棄物の最終処分場の選定に関し政府が科学的特性マップを発表し、国民への理解活動を全国展開している段階である。一方で、国際的にみれば、スウェーデンとフィンランドのみが使用済核燃料の最終処分場の候補地をすでに決定し、処分施設について前者は安全審査中で、後者は建設が開始されている。両国はなぜうまくいったのか事情を検討する。



1.日本と両国の比較

上記の両国と土地利用を比較すると日本の人口は圧倒的に多いが、土地利用の形態はとてもよく似ている。一人当たりの電力供給の内訳を比較するとスウェーデン、フィンランドは日本に比べて発電量は2倍、1.5倍、原子力は13倍、10倍、水力は5倍、3倍、再エネは1.6倍、2.2倍である。火力への依存は両国は圧倒的に小さく、産業用の電気料金は日本と比べスウェーデンは42%、フィンランド48%と低い。

なお、スウェーデンはTMI原発事故を契機に雇用と社会的利益が損なわれないこと、石油と天然ガスの使用量が増加しないことなどを条件に脱原発に踏み切ったが、これらを守ることが難しく、2010年には現在運転中の原子炉の建替えに限って新規建設が認められている。両国は電力多消費国であり、原子力の重要性を国民、与野党とも認識している。地層処分にしても国民は重要性を認識しているのであろう。我が国では、化石燃料に80%以上も頼っていながら原発無しで何とかなると考えている国民が多数居り、地層処分の設置に反対する空気が根強いという大きな問題を抱えている。


2.使用済み核燃料の地層処分の概要


北欧の両国は使用済燃料を再処理せずキャニスターに封入して直接処分することとしている。日本は海外で再処理したガラス固化体の返還廃棄物と日本で再処理したガラス固化体の廃棄物をオーバパックに入れて地層処分する。
ガラス固化体は処分する体積が直接処分に比べて約1/3に減らすことができる。処分する使用済燃料の量はスウェーデン、フィンランドは日本の1/3.5、1/8と小さいので直接処分も可能であろうが、日本は直接処分では広大な処分場が必要になろう。


3.地層処分がどのようにして住民に理解が得られたのか

スウェーデン

スウェーデンは20の県のもと289の自治体からなり、学校教育, 緊急計画 環境、下水道 エネルギー供給 廃棄物収集などの地域行政は自治体に任されており、大きな権限を持っている。最終終処分地も地域行政の一環である。
地層処分場の選定は3段階で進められた。(表、図参照)
.侫ージビリティ調査

全国調査の後、地質的に問題ない地点の所在する8つの自治体に対して、1992年に施設受入れが可能かどうかについて打診が行われた。2つの自治体調査は議会で受け入れられたが、住民投票で否決された。SKB 社はこの原因を、住民に施設についての十分な知識がなかったため感情的に拒否反応を示したと分析している。



その後、同社は住民への情報伝達に努力し、1995年から1999年にかけて自治体議会の承認が得られた6つの自治体について調査を実施し、最終的にオスカーシャム、エストハンマル及びティーエルプの3つの自治体が詳細調査を受け入れる方向となったが、ティーエルプは直前になって拒否した。なお、自治体の方針決定は議会での承認を得るとともに、最終的には住民投票で決めることになっている。

▲汽ぅ板敢此環境影響評価

2002年から2007 年まで、オスカーシャムとエストハンマルについて 詳細調査が行われ、最終的に2009 年にエストハンマルが最適であるとの結論が出された。
5認可手続き

SKB社はキャニスター封入施設の建設許可、フォルスマルクにおける使用済燃料の処分場の立地建設許可、処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可の申請を提出した。2018年現在コメントが出され、政府は最終確認を待ってSKB社が申請した処分事業が許容可能であるかの判断を行うことになっている。処分開始は2029年頃の見込みである。

フィンランド


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大規模な亀裂帯を回避し安定な基盤岩ブロックを選定するために、最初に航空写真や地形図等の文献調査により324カ所を選び、さらに地質学的要因や、人口密度・使用済燃料の輸送等の環境要因に関する文献調査により5〜10km2 の大きさからなる100 カ所程度の調査地域を選定した。


概略サイト特性調査、詳細サイト特性調査

調査について自治体から同意を得る等のプロセスを経て、1985 年に5か所に絞って地表からのボーリング等による概略サイト特性調査が行われ、その後より適したエウラヨキ、ロヴィーサ、アーネコスキ、クーモの各自治体に絞ってポシヴァ社が詳細サイト特性調査や最終処分場の地上施設と地下施設を建設・操業する場合の 環境影響評価を実施した。
最終の絞り込み

実施主体のポシヴァ社は、誘致に積極的なオルキルオト原子力発電所所在地であるエウラヨキ自治体とロヴィーサ原子力発電所所在地であるロヴィーサ自治体に絞って検討を進め、規模が大きく輸送コストが安く済むという利点から エウラヨキ自治体を選定した。
ぜ治体による受け入れ表明

エウラヨキ自治体は2000 年に議会で投票を行い(賛成20/反対7)、最終処分場の受け入れ意思を表明した。これを受けて、政府は2000年12月に原則決定を行い、その決定内容を国会が2001 年5月に承認した(賛成159/ 反対3)。これにより、エウラヨキ自治体のオルキルオトが最終処分地に決定した。(フィンランドは、世界で最初に高レベル放射性廃棄物「使用済核燃料」の処分地を決定した国である。)


4.日本はどのように取り組んでいるのか

火山国、地震国の日本

日本は火山、地震など自然条件が厳しいので、2017年7月に火山、断層の有無などを考慮して科学的特性マップを作成した。これを見ると、高レベル廃棄物の輸送は海上輸送が中心であることから、長い海岸線には多くの適地(濃いグリーン 全国に約900カ所の自治体)があることが分かる。また、実施主体のNUMOは対話型全国集会を2018年、2019年だけで80回開き地域住民の理解に努めてきている。
地域の意見を取り入れる仕組み

2007 年1月高レベル放射性廃棄物処分場調査公募に応じた高知県東洋町のケースでは、近隣自治体が反対し、産業、観光面の風評被害などから高知県知事は資源エネルギー庁に撤回を申し入れた。町長は辞職し、再選挙の結果現役町長が落選するまでの事態になった。
北欧両国の経験を踏まえると、地域住民や国民に納得してもらうためには技術的安全性だけでは不十分であり、地域の意見を取り入れる社会的な仕組みが大切になる。自治体の判断、住民の判断の仕組みをどうするのか、地域への経済的支援、産業活動の振興などが大切であり、実施主体の信頼性、国の関与が設置地域の住民にとって重要となる。
NUMOは、これらの経験やスウェーデンやフィンランドの取り組み方法も参考にしながら、国や自治体と協議をし、住民が納得できる方策を進めようとしている。
5.両国はなぜ受け入れたのか

”坡亮太への懸念


地中埋設処分には、反対グループや政党などは地下深部が目に見えないことに起因する不安感や、数万年から数十万年後の安全評価結果の不確実性に対する懸念などを指摘する。現在のわれわれの知見から数万年、数十万年後の自然の変動や我々の安全対策が保証できるかと問われると、解を見出せない難問となる。
このため、スウェーデンは埋めたキャニスターが引き抜き回収できること、フィンランドは回収性を考慮しないものの、回収が必要となった場合は逆手順で回収可能であるとの概念を提示している。また、NUMOは処分場の閉鎖前までは安全で合理的な範囲内で廃棄物の回収可能性を確保することとしている。(図参照)

地域経済への貢献


地層処分事業が100年の長期間にわたって地域の発展に役立つと共に、やがては科学技術の拠点にもなるということが期待できるとの説明も必要となろう。具体的には:
スウェーデンの実施主体のSKB社:

長期的な事業の継続を望み、一方自治体は地域経済の発展に関して責務があり、協力の枠組みへと発展させている。
SKB社の計画では、オスカーシャム自治体で今後も使用済燃料の集中中間貯蔵が行われるほか、それらをキャニスターに封入する施設を新たに建設し、エストハンマル自治体にそのキャニスターを処分する最終処分場を建設する。
さらに、自治体振興のための追加支援を、原子力発電事業者とSKB社とで2025年までの期間に総額20億スウェーデン・クローネ(300億円)規模の経済効果を生み出す付加価値事業を予定している。この支援は地層処分場のサイト決定前に「地層処分場が立地されない自治体に75%」という合意に基づき、エストハンマル自治体で25%とし、オスカーシャム自治体で75%が配分される。また、国は資金確保法を制定し、原子力廃棄物基金からの交付金で自治体が行う情報提供や協議に要する費用を賄うこととしている。


エストハンマル市は図に示すようにすでに、原子力施設、金属工業、小企業など多くの企業、従業員を抱える地自治体であり、本事業によりさらに多くの産業が集まることも期待できよう。

フィンランドの実施主体であるポシヴァ社:

環境影響評価の中で社会経済面の影響評価を行い、雇用の創出と人口増加がみられ、農業、観光、不動産価値へのマイナスはないと結論付けた。ポシヴァ社と地元エウラヨキ自治体との間で協力協定(1999年)を締結し、ポシヴァ社はエウラヨキ自治体に対して、新たに高齢者向けホーム施設を建設する資金を貸与することとした。
エウラヨキ自治体は、老朽化対策に悩んでいた高齢者向けホームをポシヴァ社に事務所としてリースした。この施設は、1836年に建設された旧領主邸宅という由緒ある建物である。

6.地域の活性化が期待される



かって陸の孤島と言われた東海村には、旧原研、原電、旧動燃と先端の原子力施設が作られた。その後は東大原子力工学研究所、中性子医療研究センター、那珂火力発電所等も作られ日本を代表する科学技術のメッカになっており、工業団地も作られている。この結果、東海村の人口は昭和30年の11,600人が昭和50年には25,200人、現在は約37,700人であり、就業者は17,300人で他地域からの通勤者は10,900、また他地域への通勤者は8,800人と活気ある素晴らしい街になっている。
地層処分場が建設される地域は原子力産業や研究機関だけではなく、鉄道、港湾整備も必要になることから多くの産業が集まることも期待できよう。

まとめ

スウェーデン、フィンランド両国は、エネルギー利用大国であり、安価な電力供給のためには原子力が重要であることを国民が理解している。地域での受け入れについては、段階的に地域の賛否を取りながらおこなっており、地層処分の安全性が担保された事はもとより、地域の発展に貢献することも相まって地層処分が認められるようになったのであろう。(参考:フィンランドの原発、地層処分の世論の変化)
一方我が国は、福島第一事故が起きたことで原子力への信頼が失われ、政府は、エネルギー基本計画で「可能な限り原子力を削減する」との国の方針を出さざるを得ない状況となっている。
このような国の方針のもとで、地層処分に賛成する地域が出て来るとは考えにくいのではないか。
地層処分を自信をもって進めるためには、政府が原子力への信頼性を高めるべく積極的にエネルギー基本計画を見直すなど推進の努力が必要であろう。
参考とした資料:諸外国における 高レベル放射性廃棄物の処分について (2019版)
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