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SEJ 日本のエネルギーを考える会

SEJだより 第3号 パリ協定はこのままでは危うい! ー温暖化対策の有効なアプローチは何か?ー


カテゴリ:  エネルギー » 地球温暖化    2020-4-13 8:00   閲覧 (1589)

COP25が2019年12月にマドリードで開催された。パリ協定が採択されたCOP21以後の主な懸案事項の協議が懸命に行われたが、結局合意に至らなかった。その根本的原因は、温暖化抑制という総論には合意しても各国の被害の程度、利害や考え方の違い、思惑の溝が深かったことによる。すなわち肝心の具体的行動に向けては本質的な困難に直面しており、次回に進展が望めるのか憂慮すべき事態と考えられる。以下COP25での争点、世界のCO2排出の状況と今後の見通しを述べたうえで国際的取り組みについて考察する。

1.COP25では何が争われたか?


 峪埔譽瓮ニズム」の実施ルール:他国の温室効果ガス(GHG)排出削減を支援した国は、削減できた分を自国の排出分から削減できるが、支援を受けた国はその削減分を自国の削減量とすることができないという問題を抱えている。このため途上国はその扱いを修正するよう要求したが合意に至らなかった。
GHG削減目標の引き上げ:EUや島嶼国は前向き、石炭資源国のオーストラリアは反対、中国、インドは先進国がさらに努力すべきと主張、米国はパリ協定からの離脱を正式に表明。これらの事情から削減目標の引き上げには至らなかった。COP25に向けて、GHG削減目標引き上げを表明した国は84ヵ国、2050年までにGHG排出量実質ゼロを表明した国は73ヵ国に達した。
2. 世界のCO2排出量の現状と今後の見通しは?


2.1 現状とこれまでの推移は?


世界のCO2排出量の中で中国、アメリカで約43%と圧倒的割合を占める。日本はインド、ロシアについで5位でその割合は3.4%である。(左図)
1990年〜2017年にわたる各国CO2排出量(億トン)の推移を見ると、中国は2000年以降2017年までに3倍という急速な拡大と、インドの顕著な増加が認められる。他の国々はほぼ一定である。



2.2 今後の見通しは?


(1) 一次エネルギー需要見通し
WEO2019公表成長シナリオによると中国やインド、東南アジア、中東、アフリカなどの国々では、経済成長と共にエネルギー需要の増加が見込まれる。中国は引き続き最大の需要国であるが、インドの増加が著しい。一方先進国はほぼ一定である。2040年では2010年に比べて世界全体で約40%の増加が予想されている。(右図)
(2) 一次エネルギー源の内訳
2040年になっても7割以上は化石燃料に依存しており、バイオ、水力以外の再エネは7%に留まっている。バイオの割合が比較的大きいが大部分は途上国での伝統的熱利用によると推測される。


2.3 何が読み取れるか?


近年世界全体で見るとGHG排出量は低減しているわけではなく、中国、インドを始め途上国ではエネルギー需要は急速に増大する。途上国の化石燃料使用の大幅削減に最大限の努力を傾注すべきであることが分かる。
3. 世界の最近の動向は?


以下日本と野心的目標を掲げる欧州の動向について概説する。
3.1 日本


COP25において削減目標の引き上げも、大きな議論の対象になった「脱石炭」も表明しなかった。2013年を基準年として2030年26%の目標に対しては現状ほぼ目標線に沿って削減が進んでいるように見えるが、CO2削減の切り札と期待される原発の稼働が進展していないことから、今後目標を達成できるか危惧される。2050年80%削減目標に対して現状では達成の道筋を持っているわけではない。小泉環境相は今年2月の記者会見で「(CO2実質ゼロへ)できるかどうかより、その方向に行くという意思表示がまずは重要だ。」とまで述べている。
3.2 欧州


日本と同様に目標ラインに沿った推移を示すのはイギリスである。フランスはすでに原子力と再エネの導入が進んでいるので近年は横ばい状況が続いている。一方ドイツはこの面で世界のリード役を自認しているが、目標ラインから上ぶれし、最近も横ばい状況となっており目標達成は危うくなっている。
EU欧州委員会は2030年までに排出量を1990年比でこれまでの40%削減から50〜55%削減へと大幅に引き上げ、さらに、2050年までにGHGの実質的排出ゼロを目指す新たな政策を公表した。これに対し産業界は国際競争力や収益性に対する配慮を求めている。
この背景もあり環境規制の緩い国からの輸入品に対して事実上の関税を課す「国境炭素税」を導入する検討に入った。これに対して米国から対抗措置をとるとの猛反発が起こった。原発については排出削減の手段としての位置づけを巡って議論されている。脱原子力、脱石炭を唱え、エネルギー確保、経済性を同時に満足することは単に再エネ拡大で解決できるレベルの問題ではないように思える。
4. 今後どうするか?


世界で圧倒的割合を占める中国と米国の排出量を減らすことが最も効果的である。しかし、中国はこれまで通り経済成長を最優先にしており期待できない。米国はパリ協定からの離脱を正式に表明している。ここまでGHGが増大したのは、先進国が豊かな生活を享受するために化石燃料を野放図に使い続けてきた結果であるという途上国の主張に反論の余地はない。そのため先進各国は第1にそれぞれの国の排出量を極限まで減少すべきである。第2は途上国の省エネと低・脱炭素転換に強力な支援を与えることである。
4.1 日本を含め先進国は?


省エネを徹底的に進めることは勿論、低炭素・脱炭素の革新的技術開発を推進し普及することが肝要である。有望なものの例としては、電気自動車の普及をもとにその膨大な容量の蓄電池を基軸とするエネルギーの需給調整システムが考えられる。しかし電気自動車は社会に本格的に普及してその効果が大きく発揮できるまでには数十年かかること、さらにシステムの経済性と信頼性を実証するためには膨大な資金と期間を要することを認識すべきである。
今の時点で実現が見通せて目標達成に貢献できる技術と、革新的技術の長期的な開発を併せて進めることが必要になる。後者はいつどの程度効果を発揮するのかは見通せないのが実情である。そういう意味では原発はGHG削減効果が大きく、さらに改良が期待できる技術であり、日本も含む先進国では途上国での利用を先導する意義も含めてより積極的に推進すべきである。
4.2 途上国援助


先進国の全世界での排出割合がさ程大きくないうえに、削減対策の投入資金に対する削減効果は低下せざるを得ない。パリ協定ではGHG削減に向けて先進国が途上国に対し資金面と技術面で支援を行うことが合意されている。そのためのスキームとして「市場メカニズ」があるが、前述のように暗礁に乗り上げている。
日本はこのような制度の一環として「二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、JCM)」を提唱して一定の成果を挙げてきた。これは途上国のGHG削減に貢献し、その成果を二国間で分けあう制度である。しかしその規模は未だ小さく様々な課題があり、地球規模での貢献には至っていない。前述のようにクレジット制度の下では削減量が途上国側に計上されないことが問題である。
先進国は適用可能な技術や資金を提供することにより利益を得ることができるのであるから、削減に対する貢献度を評価する例えば認証制度を創出してその成果を世界に示すことに止め、削減量は相手側に計上することでこの問題の妥結を早期に図ることも考えられるかもしれない。
技術移転は基本的には民間の商業ベースで行うべきだが、それが困難な案件に関しては公的海外協力機関や政府からの支援も必要となろう。この場合は先進国での既存の技術が適用できるので、削減効果に即効性があるし、各国の技術開発競争を刺激しGHG削減を加速することになろう。

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