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SEJ 日本のエネルギーを考える会

SEJ だより 第8号 太陽光は温室効果ガス排出ゼロへの切り札になるか? −余りに大きい変動性の実態!ではどうするか?−


カテゴリ:  エネルギー    2020-12-6 9:10   閲覧 (1962)

菅首相は「2050年までに温室効果ガス(GHG)の実質的排出量をゼロにする。」と表明した。その目標達成に向けての具体的方策や見通しを現状では持っているわけではなく、そこに向けての強い決意を示したものと言えよう。発電部門はGHG排出の約40%を占めており、今後電化が進展することを考えると発電部門からの排出を限りなくゼロに近づけることが求められる。
1.はじめに
これに応えるため再生可能エネルギー(再エネ)の一層の活用が必要となる。日本の再エネの導入状況の特徴として太陽光発電が圧倒的割合を占めていることが挙げられる。再エネの中で出力変動性が大きい太陽光発電が一定規模以上に拡大すると、変動性を補償する設備やシステムをどう構築するかという新たな困難な課題が顕在化し経済性に大きな影響を与える。
太陽光の変動性は一般的に理解されているが、今後その発電割合が増加するとどのようになるかを実際の電力需給データに基づいてその様相を目に見える形で示す。さらにそれを踏まえてどのような対策が考えられるかを考察する。
2.太陽光発電の導入状況と制度の見直し
太陽光発電は他の電源に比べて設備利用率が15%程度と低い。このため所要の発電量を得るためには大きな設備容量が必要で、それに対応する大きな設置面積の確保が課題である。また、発電量は日照に依存し原理的には定格容量100%からゼロまで変動するので変動性の影響が非常に大きい。


2012年度以降FIT制度を受けて再エネの導入が進み、特に太陽光は2019年度末には「長期エネルギー需給見通し」で2030年に想定されている7%を超え、7.9%までに至っている。これに対して風力は0.8%に留まっている。
図1を見ると太陽光発電は2019年末で設備容量は約5,330万kWに達している。ただし2015年度以降伸びが鈍化している。認定済だが導入に至っていない設備は約2,400万kWも存在し問題になっている。
FIT制度の下で買取価格が高いことから電気料金が上昇し、国民負担が増している。そのためFITの買取価格を毎年下げるとともに、産業としての自立化を図るため一部入札制度を導入し対象を順次拡大している。更に市場価格に一定の補助金(プレニアム)を上乗せしたFIP(フィード・イン・プレニアム)制度への移行も検討中である。今後は「全量売電を前提とした野立て型設備ではなく、自家消費を前提とした屋根置き設備等の支援に重点化」する方向となることが予想される。再エネ導入を促進するため送電網の増強、送電設備の利用ルールの見直し、出力制御方式の改善等の措置が実施されてきた。


 
3.今後の導入見通し
「太陽光発電協会」は2050年におけるGHG排出量80%削減に対応する導入計画を述べている。そこでは太陽光の設備容量300GW(3億kW)、発電割合31%を必要としている。これを供給する設置場所としては需要地に近い住宅や商業施設等の割合を高く見ており従来のメガソーラ立地が次第に困難になることを暗示している。
またこのような膨大な導入状況では、過剰電力が膨大になるため出力抑制率が極めて大きくなるので、それに対処するために大量の蓄電池や需要調整用の給湯設備が必要と評価している。一方ある研究機関はFITでの未稼働案件が設置された後は、入札枠の拡大により導入が頭打ちになると推測している。
 
4.検討ケース
2019年度における日本の太陽光の発電割合は前述のように7.9%である。太陽光発電の割合が高い(11%)九州電力(九電)と低い(5.7%)関西電力(関電)を検討対象にし、最近1年のデータに基づき電力需要が最大になる夏と最小になる春を検討時期(具体的に検討した月日は需要と太陽光の発電状況が中庸となる日を選定した)に選んだ。実際の年間を通しての状況はこれら2つの間にくる。発電比率を変えた検討ケースを表に示す。これらの検討の意味は、日本全体がこれらの電力需要変化と自然条件とくに日照条件で代表できるとした時の電力需給状態を表現するものと解釈することができる。なお、夏の最大電力需要は春の約2倍で季節による変動が非常に大きい。


5.検討結果
(1) 【現状】:春は電力需要が少ないため太陽光の変動性の影響を大きく受ける。九電の春(図1)に破線で示す太陽光の出力抑制(出力制御)を実施している以外、主として火力の出力増減で対応できている。

九電の通年の供給過剰は関電に送電することにより調整。九電、関電とも揚水による調整を実施。九電、関電とも水力以外の再エネである地熱、バイオマス、風力は極めてわずかであり、風力発電量は日により又時間により大きく変動していた。
(2) 【太陽光3倍】:太陽光を九電では33%、関電では17%にしその分火力を減らすと、九電では需要の多い夏(図2)でも昼は火力による調整範囲を2倍以上超え、太陽光の大量抑制/蓄電が必要。春(図3)は需要の1.7倍の大量過剰を生じ、さらに膨大な太陽光の抑制/蓄電が必要。関電では夏は火力で調整可能だが、春(図4)は需要の40%の過剰となり、九電と同様な措置が必要。夕方以降はいずれも不足となり火力の増加か放電が必要。



(3) 【原子力ゼロ】:九電は27%から関電は22%から0にし、その分太陽光を増やすと(太陽光比率は九電60%、関電39%)九電、関電とも夏、春いずれも太陽光の過剰は対応不可能な程増大する(図5では需要の3.2倍過剰)。
(4) 【太陽光以外の再エネ3倍】:風力等の発電割合を35%にし、その分太陽光を減らした場合は太陽光の変動影響を大幅に緩和できる。
・上の検討では火力の存在を前提にしているが、GHGを実質0にするためには、火力はCC(U)S併置か再エネ又は原子力電力から製造された水素火力発電で対応する必要がある。
・日本特有の現象として梅雨や秋の長雨がありその時期は太陽光の出力は低下する。九電において今年7月の太陽光発電量は8月に比べて62%位であった。太陽光発電の低下割合は関電、東電、東北電でもほぼ同じであった。これに対して蓄電池で対応するためにはその容量は極めて大きくしなければならない。
・以上の検討から太陽光の割合が15%位であれば、余り大規模な対策を講じなくとも対応可能と考えられる。ただし昼間の発電過剰に対しては大幅な抑制をせざるを得ないのは必然と言える。
 
6.ではどうするか?
これまでに述べたように太陽光発電は極めて変動性が大きく、昼間の過剰と夕方以降の不足が顕著に見られる。一方電力需要も大きく変化する。それに対する電力供給をこれまでベースロードとして原子力と火力が、電力調整を火力が担ってきた。
今後GHG排出0を目指して太陽光が主力電源としての役割を果たすためには以下の対策が考えられる。
 
(1) 変動性の影響緩和面では
^貭衫未慮胸厠呂魍諒櫃掘年間を通してのベースロード電源とするとともに、ゆるやかな日負荷変化対応運転を行う。
太陽光以外の再エネの風力、水力、バイオマス、地熱等の大量導入
C濺澱咫並舁椴漫屋根置き太陽光パネルと併用される中小型蓄電池、EVの蓄電池)の大規模導入
ね松蠹杜呂鰺用した水素製造と水素あるいは水素化合物ガス火力による電力調整
CC(U)Sを併設した従来の火力による電力調整
需要面での調整として省エネ、蓄熱、大容量電気機器の運転時間の調整等
なお、地域間の連係線の増強による電力調整も考えられるが、各地域とも太陽光が圧倒的に多い場合には調整は殆ど期待できない。それは各地とも太陽光の発電状況が似通ったものになるからである。
(2) 現状の数倍の設備容量を確保するためには
―祥莠舂呂離瓮ソーラタイプは適地が次第に限られてくるうえ、FITによる恩恵が得られなくなるので今後経済性を高めて今後一定の容量を確保する。
大量生産で経済性が向上する中小型蓄電池併置も含めて商業施設、工場、個人住宅に設置するタイプの発電を増強する。これは非常時の電力供給や地域経済発展の一翼を担い、大きな役割を果たす。
3発中の革新的太陽電池や蓄電池を利用して建て替えや従来設置しにくかった場所に設置できるようにする。
このうち(1)^奮阿鷲甬擇忙間がかかりその間にGHGが蓄積されることになる。太陽光発電それ自体は著しく経済性が向上しているが、上記の対策には革新的技術開発を行う必要があり、そのためには多大の資金と期間が必要である。それらが技術として成立した後普及させるためにはさらに多くの努力が求められ、これらの設備、システムを運用するためには莫大な費用がかかることに覚悟する必要がある。再エネの合理的範囲での拡大は望ましいが、再エネだけで目標を達成できるとは考えられない。次期エネルギー基本計画の策定において、脱炭素電源で自給率向上と安定供給に寄与し、経済性に優れ今でも活用できる原子力とどのようなベストミックスを組むかが最重要な検討課題となろう。
本検討では電力需要状況を現状のままとしているが、‖斥杆発電出力の抑制、EVへの充電、水素製造、熱利用への変換等に使用する場合にはその分太陽光発電量を増加させ(発電比率を高め)なければならない。他方◆↓は変動性の緩和に一定の役割を果たすことが期待できる。
今後需要の+電化をさらに推進し太陽光等の電力を輸送部門における電化(EV)や熱利用、水素製造等に利用してGHG削減に貢献するとともに太陽光の過剰電力の吸収に寄与することが期待される。本検討では電力需要の状況の現状のままとしたが、このことが現実化すれば電力需要状況が変化することになる。

キーワード 太陽光発電 多い九州電力 温室効果ガス 排出ゼロ可能か

 
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