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SEJ 日本のエネルギーを考える会

SEJ だより 第19号 小型核融合炉の導入可能時期について ―2050年までの経過期間をどうするかー


カテゴリ:  原子力政策    2021-11-17 10:40   閲覧 (1250)


今年9月の自民党総裁選において高市早苗候補(現自民党政調会長)は、「2050年のカーボンニュートラルの達成には原子力が必要であり、特に小型核融合炉やSMRが有望である。」という発言をされている。このような発言が自民党の指導的立場にある政治家から出たということは、原子力推進を是とするSEJの一員として非常に頼もしい限りである。このような発言があった機会に、今後の原子力や核融合について私見を述べてみたい。

<結論>
 従来の核融合プラズマの物理基盤からすると、核融合反応条件を持続的に達成するプラズマを得るためにはある程度のプラズマの大きさが必要になる。現在、国際協力で建設を進めている大型核融合装置「ITER」はプラズマを閉じ込めるコア部分だけで直径約30m、高さが約17mの大きさの装置となっている。この規模の装置サイズで先ず核融合反応が持続的に維持できることを実証し、その後でプラズマ条件の改良や核融合炉材料の開発で小型化に向けた開発が進んでいくと思われる。
現在の大型核融合装置での発電は21世紀中葉での実現を目指して開発が進められており、その後に小型核融合炉という形態になっていくものと想定されている。
以上から発電に資する小型核融合炉の実用化は早くても2050年以降になるものと推定され、2050年のカーボンニュートラルに供することは困難と思われる。このことから核融合発電が実現するまでの間、安全性が格段に向上した軽水炉の新増設、更にSMRや大型高速炉等の開発を推進すること で2050年カーボンニュートラルの達成に貢献できることを期待したい。
<詳細説明>
ヽ僕珊臠娠の持続条件
核融合反応を持続させるためには、プラズマの温度(T)、密度(n)、それに高温プラズマを閉じ込めている時間(τ)の3つの要素の積、つまりT*n*τ(いわゆる核融合プラズマ3重積のクライテリア)がある一定以上の大きさ(核融合反応臨界条件)が必要になる。
プラズマ温度に関しては高周波加熱装置や粒子入射加熱装置を使ってプラズマを数億度まで加熱し、プラズマ密度に関してはプラズマを閉じ込める磁力線の最適化し、またプラズマ閉じ込め時間はプラズマサイズを大きくしたり、高温プラズマ挙動を安定化させる工夫をすることで飛躍的に高めることができる。つまり核融合反応を達成し易くするためには装置の大型化が有利になる。
[この閉じ込め時間はプラズマのサイズに比例して長くなり(τ∝an、a:プラズマのサイズを示す数値、n:正数)となり、大きなプラズマほど核融合条件を達成し易い。]

ITER: International Thermonuclear Experimental Reactor (国際熱核融合実験炉)計画



EU,日本、米国、ロシア、中国、インド、韓国の国際協力でフランスで建設が進められているITERは2025年に最初のプラズマ着火を目指している。その後、10年かけてプラズマや装置本体の性能確認をしながら研究開発を進め、2035年から重水素と三重水素による核融合反応実験を進めて、核融合発電炉に向けた実証実験を進める計画である。この実験でのデータべースを基にして、核融合実証炉の建設を進め、2050年代には核融合発電炉の建設を進める予定になっている。
ITERの概略形状を右図に示す。ITERは上記々爐能劼戮燭茲Δ縫廛薀坤泪汽ぅ困鯊腓くして、核融合反応条件をより確実に達成できるようにしている。
出典:文部科学省HP (1)
➂核融合反応条件のこれまでの実績値と今後の予想
上記,乃載したように核融合反応を起こすには以下の3つの条件を同時に達成する必要がある。
★プラズマが約1億度以上の温度になること(温度)
★1立方cmの中に原子核の数が100兆個以上あること(密度)
★プラズマ閉じ込め時間が1秒以上あること(時間)
この3つの条件をローソン条件といい、これを同時に達成するには大きな物理的、工学的問題をクリアーする必要がある。
下の図に示すように 日本(JT-60他)(赤印)米国(緑印),欧州(黄印)やロシアは1960年代から熱核融合研究を推進しており、プラズマのサイズの大型化を図りながら、ほぼ10年ごとに一桁ずつ性能が向上してきて、1990年前後までの研究の進展から、核融合発電炉実用化への見通しを描くことができるようになった。
出典:QST-HP (2)









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米国を中心として民間のベンチャー企業による核融合装置の開発がここ10年ほどで急速に進展しつつある。例えば、コモンウェルス・フュージョンシステムズ(3)はMITと共同で来年から、スパーク(SPARC)という核融合炉を建設して3〜4年で完成させ、気候変動対策に間に合わせるとしている。


またTAEテクノロジー社(4)による磁場逆転方式によって2030年代の実用化目指しているとのことである。この磁場逆転方式の原理は数十年前に多くの研究が行われ、中途で頓挫してしまったが、もしこれが実用化に向けてブレークスルーを果たしたのであれば素晴らしいことだと思う。この他にも英国やカナダなどでいくつかの核融合ベンチャーが起業されている。
これらはいずれもベンチャーキャピタルから数百億円規模の資金を獲得して民間核融合の開発を進めており、大きな注目を集めている。


ただ一方で上記,能劼戮燭茲Δ乏僕珊臠娠条件を満たす装置を作るためにはある程度のサイズが必要であるという従来の物理的基盤に沿った路線での研究開発も国家プロジェクトとして並行して進められている。
もしこれらのベンチャー企業が小型核融合炉の開発を進めて何らかの物理的・技術的ブレークスルーが得られたとすると,
この結果は核融合炉開発全体において大きなイノべーションをもたらし、早期の核融合発電の実現に向けた起爆剤になることは間違いないだろう。

以上
<参考文献>
(1)文科省サイト、ITER計画の概要:文部科学省 (mext.go.jp)
(2)QSTサイト、Microsoft PowerPoint - 0.重点化タスクフォース.ppt (qst.go.jp)
(3)Commonwealth Fusion Systems、Commonwealth Fusion Systems | MIT Energy Initiative
(4)TAE Technologies、 TAE Technologies | Fusion Power Clean Energy Company

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